※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:プライベートバンカー/清武英利 (ノンフィクション小説 2016年)
評価:★4(★★★★☆)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B07JCN2Z5Q
1年ほど前に購入して積んでいたKindle本を、夏休みのレジャーの電車移動時間を利用してやっと読んだ。読んだきっかけは、岡田斗司夫ゼミで紹介されていたこと。本作は2016年に単行本が刊行され、2018年に刊行された文庫版では追跡取材の3篇が追加された。私が読んだKindle版は文庫版を底本としたもの。
著者の清武英利さんはプロ野球読売巨人軍の球団代表だった2011年に「清武の乱」でナベツネを「読売巨人軍のコンプライアンス上の重大な件」と題した記者会見で告発した方だ。
【概要 (Amazon商品ページより)】
大金持ちをタックスヘイブンの国に誘う「カネの傭兵」。それがプライベートバンカーだ。
野村證券のトップセールスマンからプライベートバンカーに転じた主人公が見たのは、本物の大金持ちの世界だった。
シンガポールに移住し、ただ時間が過ぎるのを待つ元大手メーカー会長、若くして300億円を手にしたIT業界の寵児、伝説の相場師、そして脱税を見逃すまいと潜伏する国税庁の美人調査官。
やがて、バンカーの周囲では、カネを巡る詐欺と殺人未遂事件まで発生する。
バンカーが実名で明かす衝撃のノンフィクション!
上記の煽り文句の通り、登場人物の多くが実名で登場し、主人公の杉山も実名らしい。主要な舞台となるシンガポールの”プライベートバンク”「BOS社」も実名だが、そこのジャパンデスクの絶対的存在であるボスの桜井は仮名、しかし桜井の右腕で後半に犯罪に手を染める梅田は実名。
【以下ネタバレあり】
物語は野村證券でやり手の営業マンだった主人公の杉山がBOSに転職してシンガポールに降り立つところから始まり、BOSのジャパンデスクの絶対的存在であるボスの桜井が杉山の顧客を奪おうとパワハラまがいの圧力を掛けてくるところが中盤の山場(第3章「攻防」)。後半は杉山と桜井の全面戦争になるのかと思ってワクワクして読んでいたら、第4章「海を渡った日本人富裕層」第5章「国税は見ている」でいろいろな富豪たちのショートストーリーになってしまい、第6章で再び杉山の物語に戻るが期待していたような展開はなく、杉山は静かにBOSを去る。第7章は桜井の右腕だった梅田がBOS顧客の資産を横領し、証拠隠滅のためにその顧客の殺害を企てた話(実話)が描かれる。
小説としては「杉山 vs. 桜井」が見られずに物足りなかったが、それはノンフィクションであることを重視しているから仕方がないと思う。私としてはシンガポールに集まる超富裕層の世界を垣間見ることができて面白かった。
ビジネスで大成功して資産を築いた超富裕層がお金の本質的な意味を見失い、節税と資産運用を追い求めて不幸に転落していく様は滑稽だ。幸運にもビジネスの才覚に恵まれて、時勢にも恵まれて、たまたまビジネスに成功して大金持ちになったのだから、その幸運を還元するつもりで納税すればいいのにな。税金の使い途が気に入らないのなら、自分が選んだ団体に寄付したり、または自分で慈善事業をしてもいいし。それでも自分の手元に余生を悠々と過ごせるだけのお金は残るのだから。
私は、お金の本質は「感謝の大きさを数量化して受け渡しする手段」だと思っている。資産の大きさが一定以上になって「カネがカネを産む」状態になってしまうとこの本質から離れてしまう。資産運用の利益で生活が送れるとしても、そのお金にはもはや誰の感謝の気持ちも込められていないから、仕事をしない金持ちは自分が社会から価値ある存在として認められているという実感が得られず、心を病むのだ。自分の子供に資産を引き継がせたいという思いも同じ。仮にシンガポールに資産を逃してそこで無事子供に多額の資産を引き継がせることに成功したとしても、それは子供が仕事を通じて社会から価値ある存在として認められる機会を奪うことになり、その子供が不幸になる確率は高まる。