※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:鋼の錬金術師 (漫画 2001〜2010年)(全27巻)
評価:★3(★★★☆☆)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B074CD5MBC
ゼロ年代の名作漫画と名高い本作をブックオフで安価で見つけたので全巻購入して読んでみた。中学1年生の息子と小学5年生の娘は気に入ってすぐに全巻読破していた。私は5巻くらいまで読んだところで一旦中断したあと、夏休みに時間をとってようやく全巻読破した。
私の評価は「期待はずれ」。対象読者層を中学生に設定している「月刊少年ガンガン」連載ということもあって、ストーリーもギャグも子供っぽすぎる。厨二病っぽい設定満載ということもあり子供の心には響くのかもしれないが、大人には合わない。アラフォーの私が読むと正直言ってひとつも感動できるポイントが無かったし、ストーリーを追うのがとにかく面倒なだけの漫画だった。
(以下ネタバレあり)
本作の最大の欠点は、プロットが分かりづらい事だ。割と早い段階の第8巻の時点で敵グループのボスは「お父様」で、「七つの大罪」ホムンクルス達はその配下であることが明らかになるのだが、彼らの企みが何なのかよく分からないまま主人公側と敵グループの小競り合いが最終巻まで延々と続く。せめてそれぞれの時点での分かりやすい争点をキーアイテムでもなんでもいいから作って欲しかった。たとえば、「敵グループはアメルトリス全土を使った錬成陣を秘密裏に作っていて、既に4つの街とそれらを結ぶトンネルは完成している」→「このままだとアメルトリス全土の人間が賢者の石にされてしまう。残り1つの街を死守しよう!」などと情報を整理してくれないと争点が分からないのでストーリーに乗っかってハラハラドキドキできない。
主人公のエドと鎧のアルは「人柱候補」だとかで敵からは命を狙われないという設定も良くない。この設定のせいで戦闘シーンに緊張感がなくなってしまうし、敵グループと主人公側の争点も複雑化する。第4巻ではホムンクルスのエンヴィが戦闘でエドを倒すが、この設定のために気絶したエドを仲間の元に配達し、「あんまり無茶しないようにあんた達しっかり見張っててよね、貴重な人材なんだからさ」と敵らしからぬ優しい言葉をかけてくれる。何この緊張感の無さ…笑。同様のことがアメストリス国の総統キング・ブラッドレイにも言える。こいつも第8巻の時点で敵グループであることがはっきりして、主人公側とガチバトルするのだが、バトルが終わるとまた以前と変わらぬ軍の上下関係に戻ってストーリーが進行する。「キング・ブラッドレイはホムンクルス」と判明したときはその情報がさも重大な事のように扱われるが、結局以前と変わらぬ関係が続く。これが意味不明すぎてしんどい。
敵も味方も複数のグループに分かれて戦い、それぞれをカッティング多用で同時並行で見せられるのも疲れる。前述のように、読者は常に「エドは、アルは、マスタング大佐は、敵側は今何をしようとしているのか?」争点がよく分からない状態で読まされている上に、それが同時並行になるともう地獄。「進撃の巨人」の後半みたいだ。
第2巻から単行本の最初に「あらすじ」があるのだが、この説明(死んだ母親の錬成に失敗し、その代償としてエドの右腕と左足、アルの全身を失い、「そして兄弟はすべてを取り戻すことを誓うのだった…」という内容)は最終巻まで一文字も変わらず同じものが掲載されている。このことも、プロットがとっ散らかっていることを示している。
「”等価交換”で物質を分解して再構成することができる」という錬金術の基本設定はよくわかるのだが、「真理の扉」「真理の扉の通行料」「真理の扉のところにいる神みたいなやつ(これが真理?わからん)」「暴食(グラトニー)の腹の中は真理の扉の失敗作」「魂と精神と肉体」「死んだものは錬成できないが生きたものの肉体は錬成できる(?)」「賢者の石」このあたりの設定がごちゃごちゃしていて結局よく分からなかった。
本作はいろいろな設定が盛り盛りだが、本来はこれらの設定は作品のテーマを描くための手段であり、目的ではない。ところが本作では作者が思いついた厨二病っぽい設定を全部無理やり詰め込んでしまった感じがする。本作のテーマはたぶん「生きるとは何か?生命とは何か?」だと思うのだが、それを描くためにここまで込み入った設定は必要ないだろう。魂と肉体を分離するとか、魂だけを集めてそのエネルギーを兵器に使って肉体は捨てるとか、動物を掛け合わせてキメラを作るとか、魂を別の動物や物質に定着させるとか、もちろん作中でそれは良くないことと扱ってはいるのだが、そういう設定をこねくり回すこと自体が生命を弄んでいるようにも思えてくる。
敵グループの内面描写も不足している。「お父様」は一体何が欲しかったのか?イマイチ良く分からない。配下の「七つの大罪」ホムンクルス達もどういう思惑で「お父様」に付いて行っているのか良く分からない。強欲(グリード)だけはかろうじてキャラが出来ていたが他のキャラは全部”中身が入っていない”感じがした。いろいろな設定をこねくり回して弄んだしわ寄せがこういうところに出るのだ。
きっと作者は「スプリガン」とかが大好きで、そういうのを自分でもやってみたかったのだろう。作者はやりたいことをやり切った。それは伝わってくるし、それはそれで非常に尊いことだと思うのだが、もっと編集者が作者と読者の間に入って役割を果たしてくれればもっとずっとすごい作品になったと思う。もったいない。まあ、でも、「全世界シリーズ累計発行部数は8000万部」の大成功作品だからこんなことを言う方がおかしいか。
【概要 (Wikipediaの内容を編集)】
『鋼の錬金術師』は、荒川弘による日本の漫画作品。『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて、2001年8月号から2010年7月号まで連載された。全108話。同年10月号には番外編が掲載された。略称は、『ハガレン』。
2019年4月時点で国外累計発行部数は1640万部を、2021年7月時点で全世界シリーズ累計発行部数は8000万部をそれぞれ突破し、SQUARE ENIX発行のコミックスとしては最高記録となっている。
【アニメ版 (Wikipediaより)】
テレビアニメシリーズが2作、アニメ映画が2作ある。いずれもボンズが制作、毎日放送(MBS)とアニプレックスが製作している。
・『鋼の錬金術師』:MBS・TBS系列にて2003年10月から2004年10月まで放送。全51話。原作の連載終了予定が分からない時期に制作されたため、終盤は原作とは異なるアニメ独自のオリジナルストーリーで展開。
・『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』:2005年7月23日に松竹・東急系にて全国公開。上記テレビシリーズの最終話のその後を描く2003年版アニメの完結編。
・『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』:MBS・TBS系列にて2009年4月から2010年7月まで放送。全64話。原作に準拠した内容での再アニメ化。2003年版アニメとの混同を避けるため、『鋼FA』と呼称されることがある。
・『鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星』:2011年7月2日に松竹・東急系にて全国公開。原作第45話(2009年版アニメ第21話)の時期に起こった物語。西の国境・テーブルシティでの戦いを描く。
【実写版映画 (Wkipediaより)】
第1作目は2017年12月1日に公開。主演は山田涼介(Hey! Say! JUMP)。完結編となる2部作の『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー / 最後の錬成』は2022年5月20日と6月24日に連続公開。