※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:バービー (映画 2023年)
評価:★4(★★★★☆)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CB1YLC2N
2023年に公開されたとき、劇場で観たいと思っていたのだがスケジュールの都合がつかずに観られなかった映画「バービー」を2024年11月、自宅で鑑賞した。
この映画、公開時に映画評論家やYouTubeの映画レビュアーの評判が良く、かなり期待していたのだが、残念ながら期待外れの作品だった。ただ、リベラル価値観についてよく考える契機になったことに感謝して評価は★4(★★★★☆)とした。
序盤はかなり面白かった。「2001年宇宙の旅」のオマージュにも笑ったし、バービーハウスをそのままセットにしたようなバービーランドの描写も笑った。しかし、ストーリーがリベラルど真ん中すぎて薄っぺらいのと、チープな映像も2時間弱見せられるとさすがにイライラしてくる。テレビドラマではなくて映画なんだから、もっと映像の特別感を出してくれ。
ストーリーはざっくり言うと、前半は女性が主役のバービーランド、中盤でケンがバービーランドを乗っ取って男性主役の”ケンダム”にし、ラストは完全男女同権社会になるという筋書きだ。
「誰もが自分の好きなことをやって”自由”に生きること」これが本映画が目指す理想社会であり、リベラル思想の最終目標でもある。
私も「自由」という価値観は他のあらゆる価値観よりも優先されるべき素晴らしいモノだとは思っているのだが、現代の先進国のリベラル価値観はさすがにちょっと行き過ぎで、少し巻き戻すべきだと感じている。
たとえば「ロミオとジュリエット」という作品があるが、あれはある男女が愛し合っているのに階級が違うから結ばれない、ままならない社会の中で自由を希求するから多くの人々の感動を呼び起こす。翻って現代先進国のリベラル運動の多くは、すでに十分すぎるほどの自由を手にしているにも関わらず、「もっと自由、自由、自由を!」と節操なく言っているように感じるのだ。多様な人間が生きる社会の中で、全員が完全な自由を得ることなど不可能だというのに。
マンスプレイニング(”無知な女”に説明したがる男)とかホモソーシャル(男性社会的マッチョイズム)、男性に甲斐甲斐しく世話をする女性を軽々しく上から目線で批判する態度も気に食わない。ホモソーシャルはともかく、他の2つは、愛する異性に対して優しくしようという気持ちの表れでもあるのに、それを頭ごなしに批判してバカにすることはあまりに薄っぺらい行為ではないか。
ラストでケンがバービーにキスしようとしたり抱き寄せようとするのをすげもなく拒否するのも同じ。自分の事を慕ってくれている異性に対してあのような態度を取る人間を私は軽蔑する。
しかし、よく分からないのが、「自由に生きよう!」という標語を高々と掲げて、この新生バービーランドの住人たちや、リアルワールドに転生した主人公のバービーは、何を目指して生きていくんだろう?大統領?最高裁判事?弁護士?医者?それとも保育士?その先に本当に幸せはあるのか?「仕事」と「家庭」を2つの人生の軸とする考え方は一般的だと思うが、この映画には「家庭」という価値観の軸が全くというほど出てこない。これはあまりに不自然だしバランスが悪い。(しかし、リベラル思想が行きすぎると家庭(恋愛)からも遠ざかるということを学ぶことができたのは収穫ではあった。)
最近「グッド・ウィル・ハンティング(1997)」という名作映画を鑑賞したのだが、主人公のウィルは天才的な頭脳の持ち主で、映画のラストでその才能を買われて華々しい一流企業に就職が決まるのだが、そのオファーを蹴って「生涯ただ一人」と思った女性を追いかける。「天職」よりも「人生の伴侶」の方がずっと大切なのだというメッセージにいたく感動したのだが、本作はその真逆だ。
スタイルと顔が良い「標準タイプ」のバービーを否定しているのも気に食わない。多くの女の子が憧れるから「標準タイプ」なのだ。「大事なのは顔やスタイルではない」これはもちろん一つの真理ではあるが、憧れの気持ちで標準タイプのバービーを手にした女の子に対して「あなたの気持ちは女性差別的で間違っているのよ」と言うのは児童虐待的だ。本作は「バービー」の製造会社「マテル社」の全面協力で製作されていて、自社を卑下するのはいくらやってもらっても構わないが、バービーを愛してきた(愛している)女の子の気持ちを踏みにじることは、製造会社であっても許されないことだと思う。
だからこの映画は、バービーやリカちゃん人形を現在進行形で好きな女の子には絶対に見せないほうがいい。
本作は世界と北米で大ヒットし、世界興行収入と北米興行収入は2023年に公開された映画の中で最大となったようだ。このことは、欧米ではまだまだリベラル旋風が吹き荒れていることを示していると思う。2024年のパリオリンピック開会式で、その内容がリベラルに寄り過ぎているという批判が起きたりしているので、行き過ぎたリベラルを巻き戻すべきだという論調も無くはないのだろうが、まだまだ今後も欧米ではリベラル旋風が続きそうだ。
本作は日本ではあまりヒットしなかったようだが、「バーベンハイマー」騒動があったためその影響のためとも考えられる。個人的には「バーベンハイマー」なしでこの映画が公開されて、現在の日本がどれくらいこの行き過ぎたリベラルに毒されているのか、そのバロメーターとしてこの映画の興行収入を見てみたかった。