※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:ミリオンダラー・ベイビー (映画 2004年)
評価:★5(★★★★★)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B00FNETBV2
2025年1月、自宅でDVDで鑑賞した。たぶん3回目くらいの鑑賞だが、感動した。
【キャスト】
・フランキー・ダン (演 クリント・イーストウッド):老トレーナーでジムの経営者。「止血の名人」ともいわれるカットマン(傷の手当てを請け負う専門職)でもある。
・マギー (演 ヒラリー・スワンク):主人公の女性ボクサー
・“スクラップ” (演 モーガン・フリーマン):フランキーのジムの管理人。フランキーの親友でもある。
ボクサーの競技人生には、常に二択がつきまとう。試合で劣勢になったとき、安全を取って早めにタオルを投げ込むか、我慢して逆転に賭けるか。対戦相手選びで、堅実に勝てる相手を選んでゆっくり進むか、難しい相手に果敢に挑戦して早く名声を得るか。
フランキーは不幸にも、自分がトレーナーをしていた歴代3人のボクサーにおいて、3回ともこの50%の賭けに失敗した。
1人目は現在ジムの管理人として雇用している”スクラップ”で、試合の時にタオルを投げ込むのが遅くなった結果、スクラップは片目を失明する怪我を負った。2人目は”ビッグ・ウィリー”と言うボクサーで、今度は安全を意識しすぎていつまでも強い相手との対戦を組んでくれないフランキーに愛想を尽かし、映画の冒頭で別のジムに移籍していってしまう(しかも、移籍先のジムで強い相手と対戦して勝利し、成功を掴む)。そして3人目が本作の主人公のマギーだ。
(以下ネタバレ)
マギーに対してはこれまでの2人の経験を生かして(?)、対戦相手を選びながら慎重に育てるが、ついに強くて危険なチャンピオン”青い熊”ビリーとの対戦を許すが、ゴングの後に後ろからの卑怯なパンチを受けて転倒し、脊椎損傷で首より下を一切動かすことができないようになってしまう。
寝たきりとなったマギーは、見舞いに来た実の家族の思いやりの無い振る舞いに怒り、絶縁する。そして、フランキーに「殺してくれ」と頼むがフランキーが聞きいれてくれないことを見るや舌を噛んで自殺を図る。マギーの覚悟を目の当たりにしたフランキーはついに彼女の願い通りに人工呼吸器を止めマギーにアドレナリンを過剰投与し、姿を消す。
本作は脇役の配置も実に巧みだ。マギーもフランキーも実の家族とはうまくいかない。マギーの家族は分かりやすく最低な奴らで、フランキーの実の家族はあまり多くの描写は無いが、過去に何かのきっかけがあり、フランキーはそれを悔やんで家族に手紙を書き続けているが、返事がこない。フランキーと神父の関係も印象的だ。礼拝に欠かさず通うフランキーだが、面倒臭い質問をするフランキーを神父は煙たがっている。マギーが自殺幇助を頼んできたときにフランキーは本気で神父に助けを求めるが、神父は「自殺幇助はいけない」というだけで何の救いにもならない。
本作は複数のテーマを組み合わせた重厚な物語になっている。「宗教(神)を信じるか」「血縁上の家族と、血縁はないが心の絆で繋がった家族」「個人の意思と選択とその結果」「尊厳死」「一心同体同然のパートナーと自分」。
この映画を見ると、「未来は自分では見通せず、もちろん他人や神の助言も当てにならず、ただひたすらに自分の意思で選択し、その結果を突き進むしかない」ということを行動で体現するマギーの姿に感動する。
そして、フランキーとマギーの「一心同体同然のパートナー関係」に感動する。理屈で考えるならば、マギーは自身で決断し、その結果も責任持って受け止めているのだから、フランキーはそこに責任を感じる必要はない。”スクラップ”に関しても同じだ。実際、2人とも不幸な結果を招いた決断に対して後悔しているような描写は無いし、ましてやフランキーを責める気持ちなど毛頭ない。しかし、フランキーにとってパートナーの選手はもはや自分と一心同体で、割り切った気持ちになれるわけがない。人間のこの矛盾した感情、物理的な身体を超えて心が繋がってしまうことが、なんとも美しいと思う。