※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:ラストエンペラー (映画 1987)
評価:★4(★★★★☆)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/B09K6YBHYT
連休で時間に余裕があったので、Amazonプライムビデオにあったこの名作長尺映画「ラストエンペラー(全長版)」を見てみた。上映時間は3時間39分。なお、劇場公開版はこれより約1時間短い2時間43分らしい。
感想は、そこそこ面白かった。歴史的な場面を溥儀の視点から次々と見られるところが良い。つまらない内容だったら1.x倍速で鑑賞しようと思っていたが、映像が高級なので標準速で鑑賞しても退屈に感じなかった。すごい。(というとアカデミー作品賞含む9部門を受賞したこの”名作”映画に対して上から目線すぎるか)
ただし、主人公・溥儀はほとんどどの場面においても常に受け身で周囲に流されるだけであり、自分の意思で自分の人生を切り拓こうという意思が感じられないため、ストーリー性は弱く、映画全編を通して胸が熱くなるような場面は一度もなかった。
ただ、私は溥儀は実際にそういう人物だったと思うので、変に脚色されるより第三者目線で淡々と溥儀の人生の場面を描くというこの映画のスタンスを気に入っている。
史実をどういう立場から見ているか、また、その正確性についても考えてみる。
まず、この映画の「製作国」として名を連ねるのは中国、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアだ。イタリアを除き、全て第二次世界大戦の連合国側だ。イタリアは監督がイタリア人だから国名が入っているだけだと思う。仮にイタリアの資本が入っているとしても、イタリアはこの時代の中国の戦争にあまり関わっていないのでノーカウント。つまりこの映画は連合国側に有利な見方で描かれている事は製作体制からして間違いなく、日本人としては反日的なプロパガンダが多分に含まれている事を十分に警戒しながら注意深く見なければならない。
前半は、溥儀が成人前で紫禁城で暮らしていることもあり、”外の世界”のことはそもそもほとんど描かれないので、反日的なメッセージはほとんど感じなかった。中国人のデモ隊のような人達が日本の「対華二十一箇条」に抗議している場面はあったが、あれくらいなら許容範囲だ。
後半、溥儀が紫禁城を出て天津で暮らしたり、満洲国の皇帝になるあたりでは反日的なメッセージが濃くなってくる。
特に、坂本龍一演じる甘粕が「アジアは日本のモノだ!」と絶叫する場面と、張景恵が麻薬取引に暗躍した実績を買われて満洲国の国務総理大臣になったという設定は酷いと思った。前者は取ってつけたようなセリフで無理矢理感がすごかったし、後者はWikipediaでも「このような事実はない」と記載されているので事実無根だ。こういうあからさまな嘘を入れなければ「日本が満州国で悪いことをした」というストーリーにできないということ。それは逆説的に、日本の満州統治がそれなりに正当で穏当なものだったのではないかとの思いが強まる。日本は軍隊を派遣して治安を維持し、インフラを整備し、満州族の皇帝を立てた。満州人にとってこれ以上に良い策があったとは思えない。日本が満州を放置していたら、ロシアが南下してきたり中国の軍閥が進出してきたりできっと大変な無法状態になったことだろう。現に、日本が敗戦した途端にソ連が攻めてきてそれは現実となるのだ。
だから私は「日本は溥儀を利用して”傀儡国家”満洲国を建設した」というこの映画の基本設定自体が連合国側の悪質なプロバガンダだと思うが、残念ながら日本の歴史教育でさえもそういう自虐史観に基づいているから、これくらいはもう仕方がないと諦めている。むしろこの映画においては、溥儀が血筋以外に何も持っていないにも関わらず、世界情勢も何も分からずにいつまでも自分が偉いと勘違いしている愚か者だという事が、注意深く見ている観客には分かるようになっている。
1950年代、”戦犯”たちに対し中国共産党が見せる歴史映画が「大日本帝国は満洲で侵略の足場を固め、上海での無差別爆撃、南京での20万人以上の虐殺、真珠湾奇襲、そして満洲における細菌戦のための人体実験にアヘン生産、溥儀は満洲国皇帝として日本の傀儡に甘んじる…」という内容になっているが、これもあくまで「中国のプロバガンダ映画」という位置付けで映画内で扱われているのでこれも許す。ただし日本人はこれを信じてはいけないということは声を大にして言いたい。敵国のプロバガンダ映画を信じるなんて人の良い日本人以外にはあり得ないのだから。
現代の中国(=この映画製作時の中国)の政権は共産党。なので映画内の時代の共産党以外の勢力についてはどれだけ悪辣に描いてもOKという姿勢で中国は製作に名を連ねたと思われる。溥儀の幼少期、紫禁城での西太后とか宦官の前近代的な風習は不気味に描かれるが、これは清朝であり共産党とは関係ないから。溥儀を紫禁城に閉じ込め、そして追い出したのは国民党。国民党も共産党の敵なので「国民党が清朝の墓を暴いた」などというセリフをわざわざ映画内に入れている。
ただちょっと不思議なのは、共産党の”戦犯収容所”とか、文化大革命だとか、共産党の恥部だと思われることも映画に描かれていること。特に紅衛兵が「革命無罪、造反有理」と叫びながら行進する場面は好きだ笑。ただ、この描写を中国が許したのは、実際はもっと遥かに酷いかったことを矮小化するためだと思う。例えば文化大革命だけでも、Wikipediaには「推定死者数は間接も含めると、合計約2000万人に及ぶ。文化大革命の最中には、北京の「赤い八月」(教職に対する大規模虐殺・略奪)、広西虐殺(カニバリズム)と内モンゴル人民革命党粛清事件といった大量虐殺と共食いも発生した」とあり、想像を絶する凄惨さだったことが分かる。
映画内で好きなシーンは、ラストシーンで溥儀が故宮博物館(=かつての紫禁城)を訪れ、玉座に座るところ。あれはエモい。諸行無常。あと、溥儀がベッドのシーツの中で正妻(婉容)と側妃の3人で戯れるところ。あれはエロくて抑制が効いててよかった。同じエロでも、婉容の足を川島芳子が舐める描写はいらない。Wikipediaにも「婉容が川島芳子と同性愛関係にあったように描かれているが、このような事実はない。」と書かれている。歴史物は史実に矛盾しない範囲でやってくれ。