※)これは”チラ裏”レビューです。あまり十分な推敲もしておらず、本来はチラシの裏にでも書いて捨てるレベルの駄文ですが、ここに書いて捨てさせていただいております。この先は期待値をぐっと下げて、寛容な気持ちでお読みください。ではどうぞ。
作品名:異なる悲劇日本とドイツ/西尾幹二 (本 1995)
評価:★4(★★★★☆)
リンク:https://www.amazon.co.jp/dp/4167507021
本書は単行本が1994年、文庫が1997年に刊行された。どちらもAmazonで高値がついてしまっており電子書籍化もされていないため図書館で文庫版を借りて読んだ。
本書の著者名「西尾幹二」を検索すると、YouTubeでたくさんのコピーが出回っている「西尾幹二先生の朝生における演説動画(たぶん1994年10月)」(3分くらいの動画)がすぐに見つかるが、その動画の内容がまさに本書の核となる主張と一致している。
つまり、左翼は第二次世界大戦の日本とドイツがやったことを同一視し、「ドイツはあんなに反省しているのに日本は反省が足りない」と日本を攻撃するが、そもそもナチスドイツは大規模なジェノサイドを行ったのに対し、日本はそのようなことは行なっていないということ。まったくもってその通りだ。
本書はその他にも、当時のドイツが1989年の「ベルリンの壁崩壊」をきっかけに東西統一した後に経済格差や価値観の違いで苦しんでいる話や、1991年にソ連が崩壊し、自由主義陣営が経済支援をする話など、近年ではあまり話題に上がらない「歴史の話」も知ることができて面白かった。
ひとつ不満があるとすれば、「あの時代、日本は軍国主義に傾き、アジア諸国を侵略した」という連合国側が作ったプロパガンダを無批判にそのまま受け入れていること。実際は、「どうしても戦争をやりたかった」アメリカが卑怯な手段で日本を中国大陸での戦争に引き摺り込んだ。中国(国民党と共産党)も通州事件など日本人虐殺事件を繰り返し起こして日本を挑発した。アメリカもソ連も自らの大陸進出の野心のために中国を陰で支援した。日本政府は自国民を守るために軍を派兵し大陸での戦争に引き摺り込まれた。この認識ははっきりと持っておきたい。
本書は、約350ページの大作であるためいま全体を要約することはできないが、代わりに目次を書いておく。
第1章 異なる戦争 異なる悲劇 〜ドイツの知らなかった日米戦争の背景
・たえず新たに敵を発掘する二十世紀型テロ国家
・ナチスの根底にあった生物学的人種思想
・ナチスの殺人は戦争犯罪ではない
・ヒトラーが操縦した意図的無秩序
・性格の異なる旧日本軍の蛮行
・能動的なドイツの攻撃性、受動的な日本の攻撃性
・いわば運命に身を委ねていた大日本帝国
・日米双方の「戦意の歴史」を比較せよ
・ハワイをめぐる明治以来の日米対立
・アメリカ本位の「オレンジ計画」と「スーパー三〇一条」
・日露戦争後、アメリカは日本を仮想敵とみなした
・ヒトラーとルーズベルトの類似
・タイミングを逸した「大東亜会議」
・日本人は「全体戦争(トータル・ウォー)」の恐怖と空虚を経験していなかった
・アメリカは昔も今も「正義のお節介屋」
・ワシントン会議が曲り角だった
第2章 ヴァイツゼッカー前ドイツ大統領 謝罪演説の欺瞞 〜ドイツ人の罪の償いは可能か
・横行する無差別思考
・「集団の罪」を認めないドイツ
・ヒトラーの大量殺戮は文明の破壊
・日本は「人道に対する罪」を犯したか
・不可解な細川元首相の対独劣等感
・ドイツの戦後史は自己欺瞞の歴史
・ヴァイツゼッカーと天皇
・歴史は複眼で見よ
第3章 歴史とのつき合い方 〜英米からみた日本の謝罪問題
・新聞だけがだるい昔の歌を歌う
・略戦争史観から独自の史観へ
・歴史論争のすすめ
・「五十年後の謝罪は的外れ」
・自分を根こそぎ否定しない欧米人
・加藤周一氏の西洋劣等感
・丸山槇男氏の西洋理解の底の浅さ
・日独ファシズム論では二十世紀は説明できない
第4章 戦略なき「国際貢献」を排す 〜コール氏のしたたかさに学ぶ
・「底の抜けた樽」への空しい援助
・ドイツの財政は日本より健全
・対露支援、日本抱き込みに独仏の謀議
・ドイツの対露巨額支援というカラクリ
・貿易黒字国・日本への過大な期待
・底なし沼にはまったG7
第5章 冷戦後の「戦争と平和」考 〜軍事ノイローゼ克服の日独の差
・いまだ克服できない「日本的単純さ」
・マスコミは民族問題を言い立て過ぎる
・日独は軍事に関して神経病に罹っている
・全体戦争と限定戦争
・旧敵国が支持するドイツの海外派兵
・ドイツ統一と湾岸戦争とで共通するもの
・ドイツがおびえていたロシア人の復讐の恐怖
・北朝鮮、「まさか」がある日…
第6章ギュンター・グラスと大江健三郎の錯覚 〜「文学と政治」を再考する
・文学的政治主義への不信
・ドイツ文壇の政治参加と日本のべ平連への疑問
・あまりにも無惨で哀れな逸脱の一結末
・グラスは社民党内でも少数派だった
・進歩的知識人は過去しか視野に入れない
・歴史知識も欠く観念的煽動家グラス
・幻想的ドイツ知識人の厄介な宿痾
・大江健三郎と広島
・人類は最悪より次善の体制を選んだにすぎぬ
第7章 学生気質の変貌 〜広がりすぎた自由の悲劇
・呆気にとられることの多い今の大学
・「広い見聞」はときとして人間に有害では?
・ヨーロッパに無感動の若い日本人
・ドイツの若者も変わった
・深さ・高さ・重さの意識の欠如何事にも参加しない見物人の群れ
・自由の先には果てしなき不毛のみ
第8章 「統一ドイツ」の行方 〜われわれが初めて出会ったドイツの悪意
・市場経済原理が分っていないドイツ
・ヨーロッパの怠惰に日本がつきあう理由はない
・エリツィンと都小平の違い
・「シュタージ」の犯罪
・東独は「後期全体主義」の優等生
・ボスニアに逃げ腰のヨーロッパ
・旧共産圏に発生した新しい神経病
・ヨーロッパは遠くなりにけり
(文庫版のための新稿) 本書がもたらした政治効果とマスコミへの影響
・私の本にびっしり書きこみをしていた朝日記者
・新聞のプロパガンダを見抜けない日本の政治家の知性
・ヤスパースの割り切り方
・朝日新聞が私の正しさを証言してくれた
・ヴァイツゼッカーの臆面もない”歴史の不連続”説
・ゴールドハーゲンに当惑した人々
(解説) 恐るべき真実を言葉にする運命 坂本多加雄