週休3日サラリーマンのブログ

空気を読まないサラリーマンをやってます。1980生まれ男です。既婚。2011年生まれ息子、2013年生まれ娘あり。

「国立国会図書館オンライン」で遊んでみた

千代田区・国会議事堂の隣に、国立国会図書館という施設がある。

(Wikipedia国立国会図書館より)
納本制度に基づいて、日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存する日本唯一の法定納本図書館
・利用者が直接訪れる来館利用では、利用に許可の必要な貴重書や特別の事情があって利用の制限されている資料を除き、国立国会図書館の所蔵する膨大な資料が利用者の求めに応じて提供される。

まあ、すごい図書館だ。
しかも最近、所蔵資料のデジタル化やインターネット経由での検索・閲覧利用ができるようにサービスの拡充が進められている。
たとえば、去年にはこんなプレスリリースも出ている。

「『国立国会図書館デジタルコレクション』をリニューアルしました」
https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2022/__icsFiles/afieldfile/2022/12/21/pr221221_01_1.pdf

リニューアルの主な内容
(1) 全文検索可能なデジタル化資料の増加
(2) 閲覧画面の改善
(3) 画像検索機能の追加
(4) シングルサインオンの実現

私はこれまで生きてきた中で一度も国会図書館を訪れて利用したことはなかったのだが、もし自宅にいながらインターネット経由で国会図書館にアクセスし、日本でこれまでに出版された図書・雑誌・新聞全てを横断検索できて、しかもオンラインで閲覧までできたら…研究者でなくても活用できる機会は多そうだ。

私ならたとえば…
・ハワード・カーターの「ツタンカーメン発掘記」を読んだ。当時(1922年)、このニュースが日本でどのように取り上げられていたのか当時の新聞や雑誌を読みたい
・アンナ・パブロワの伝記を読んだ。当時(1922年)、このニュースが日本でどのように取り上げられていたのか当時の新聞や雑誌を読みたい
・1933年、国際連盟脱退の伝説の新聞記事「我が代表堂々退場す」を読みたい
・戦時中、日本が軍国主義化した時代の教科書や雑誌、新聞(〜1945)を読みたい
終戦後、価値観が反転して再出発した時代の教科書や雑誌、新聞(1945〜)を読みたい
藤子不二雄(A)の「まんが道」に出てくる伝説の漫画雑誌「漫画少年(1947-55)」を読みたい
手塚治虫の漫画の発禁となったエピソードを当時の掲載雑誌や初版本で読みたい
・名作映画が放映されていた当時の評判を当時の映画雑誌で読みたい
などなどが活用法として思いつく。

正直言って、丸一日かけて国会図書館まで行って執念深く調べるほどの熱意はないが、もし自宅から資料にアクセスすることができるなら、そのやり方を知っておいたらいろいろ捗るだろうな、と。

実は上記のプレスリリースが出た時にTwitterで噂を聞きつけて、アカウントを作るところまでは済ませていたのだが、実際に活用するところまでは至らなかった。
国会図書館の関連サイトが「国立国会図書館オンライン」「国立国会図書館デジタルコレクション」「国立国会図書館サーチ」の3つがあってどれをどう使うのか分からないし、適当に検索窓にキーワードを入れるとヒットはするが、資料の画像を表示するまでには至らず…というところで放置していた。

今回、ちょっと時間ができたので満を持しての再挑戦。
ターゲットとするのは「雑誌」。
例題として用いるのは「主婦の友」という雑誌。この雑誌をWikipediaで調べると以下のように書かれている。

>1917年2月に『主婦之友』として創刊(3月号)。創刊号は、菊判120ページ、15銭で、1万部発行。当時発行されていた『婦人画報』30銭、『婦女界』17銭、『婦人之友』20銭よりも安価に設定された。編集方針は、主婦に生活の知恵を授ける、生活に根ざした教養と修養の生活技術啓蒙誌であり、当時の婦人誌の読者層が知識階級であったのに対して、大衆層に向けたものだった。創刊号の記事は、新渡戸稲造「夫の意気地なしを嘆く妻へ」、安部磯雄夫人の「十五人家内の主婦としての私の日常」、他に「子供が出来ぬといはれた私の出産」「共稼で月収三十三円の新家庭」「お女中の心得(お掃除の仕方)」「主婦らしきお化粧法」など

>戦争が激しくなって言論統制も厳しくなり、1938年から連載していた山本有三「新篇・路傍の石」に内務省から書き直しを命じられたが、山本はこれに応じず、「ペンを折る」を1940年8月号に掲載し、連載を中止する。

>1944年12月号は「これが敵だ!野獣民族アメリカ」という特集を組み、全52頁中21頁の上隅に「アメリカ人(兵)をぶち●せ!」「アメリカ人(兵)を生かしておくな!」というスローガンが印刷され、アメリカ人を「野獣」と煽る異様なものとなった。戦争中のマスメディアについて研究を行っている高崎隆治によると、この号は古書店でもきわめて入手が難しく、戦後に戦犯追及を恐れた主婦の友社の関係者が回収・焼却したのではないかという。
(※)AIの自動検閲でBANされると面倒なので伏せ字とした(●=殺)

1940年8月号の「ペンを折る」と言う記事と、1944年12月号の「これが敵だ!野獣民族アメリカ」という記事、とても興味をそそられる。「古書店でもきわめて入手が難しく、戦後に戦犯追及を恐れた主婦の友社の関係者が回収・焼却したのではないか」とあるが果たして国会図書館は所蔵しているか?

国会図書館が所蔵する雑誌を、家にいながらにして読む方法
私が編み出した手順は以下の通り。
(1).目的とする雑誌が国会図書館においてどういう閲覧区分にあるのかを調べる
(2).「遠隔複写サービス」を申し込む(ブラウザで直接見られる資料もある)

■(1).目的とする雑誌が国会図書館においてどういう閲覧区分にあるのかを調べる

国会図書館の資料の閲覧区分は以下の4通りに分類できる。

・(a).ログインなしで閲覧可能:自宅PCからブラウザですぐに資料が見られる。ログインすら不要。雑誌でこの区分のものは見つからなかったが、江戸時代や明治時代の書物でたまにこの区分のものがある。

・(b).送信サービスで閲覧可能:「送信サービス」というのが分かりづらいが、実質は(a)と同じ区分。ログインは必要。この区分のものはかなり少なく、私が見つけたこの区分の資料は幕末日本に滞在したイギリス人が発行していた手書きの漫画雑誌「ジャパン・パンチ」のみ。

・(c).国立国会図書館内限定:デジタル化されてはいるが、(おそらく著作権などの問題で)自宅PCからブラウザで閲覧することができない資料。「図書館内限定」とあるが、欲しいページを指定すれば「遠隔複写サービス」で紙にコピーして郵送してもらうことが可能。「デジタル化されている」イコール「目次がついている」ため、読みたい記事を目次の見出しで指定して「遠隔複写サービス」を申し込むことができる。

・(d).未デジタル化:デジタル化されていないので、自宅PCからブラウザで閲覧することができない資料。「遠隔複写サービス」に申し込みできる資料とできない資料がある。ただし、目次情報がないため読みたい記事を指定することが難しく、「遠隔複写サービス」を使うことも非現実的。読みたい資料がこの区分の場合は国会図書館に行くしかないと思う。

まとめると下表のようになる。

便利な順に(a)>(b)>(c)>(d)で、読みたい資料が(a)か(b)ならば自宅PCブラウザからすぐに閲覧できて嬉しいのだが、雑誌で(a),(b)区分の資料はほとんどないため、(c)か(d)のいずれかとなる。
(c)ならば「遠隔複写サービス」を使えるが、(d)なら「遠隔複写サービス」を使うことが実質不可能。したがって狙い目は(c)だ。

閲覧区分を調べるには、「国立国会図書館オンライン(NDL Online)」にアクセスする。
https://ndlonline.ndl.go.jp/

一番上の検索キーワード欄は全文検索なので、雑誌名で検索するには空のままにしておき、「詳細検索」を開き、「雑誌」タブに切り替えて「タイトル」欄に雑誌名を入力して検索を実行する。
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下の方にスクロールしていくと、雑誌「主婦の友」本誌を発見。各号ごとのリンクも表示されているが、一番上が雑誌全号のまとめに飛ぶリンクになっている。「デジタル」表示があるのでこの雑誌はデジタル化済みと分かる。なお、「デジタル」の下に「国立国会図書館限定」と表示されているので、この雑誌は(c)区分とわかる。(a),(b)区分の場合はそれぞれここに「ログインなしで閲覧可能」「送信サービスで閲覧可能」と表示され、(d)区分の場合はここに「デジタル」表示がない。
(↓)

上の画面の「デジタル」を押下すると、「国立国会図書館デジタルコレクション」のサイトにジャンプする。右側に年代別でデジタル化済みの号の冊数表示されるのが素晴らしい。1940年代→1944年→12月号とクリックして展開していくと、記事の見出しまで表示される。あった!(笑)「これが敵だ!野獣民族アメリカ…」!(a),(b)区分の場合はこのままブラウザでコンテンツを閲覧までいけるが、これは(c)区分なので見られるのはここまで。
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1940年8月号の「ペンを折る」も読みたかったのだが、こちらの号は国会図書館が所蔵していないようで、右側メニューに表示されなかった。残念。
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■(2).「遠隔複写サービス」を申し込む(ブラウザで直接見られる資料もある)

国立国会図書館デジタルコレクション」のページでクリックを進めて「遠隔複写サービス」を申込めればいいのだが、残念ながらここは少々ユーザビリティが悪く、「国立国会図書館オンライン(NDL Online)」に戻る必要がある。
左側メニューからいろいろな条件で絞り込めるようになっており、今回は「出版年」を"1944年"にして絞り込んだ。この絞り込み機能の応答速度は非常に良好で使いやすい。
1944年の12月号をクリックする。
(↓)

1944年の12月号が開かれる。当該号の目次はここでも見ることができる。
ログインしていれば、右側に「遠隔複写」ボタンが表示されるのでこれをクリックする。
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表示されたポップアップ画面の入力をする。
「記事・論文名」には目次からコピペで「これが敵だ!野獸民族アメリカ//4~ (4コマ目)」と入力した。
「表紙」「目次」「奥付」「カラーページはカラー複写」「文字、写真が不鮮明になることを了承」に全てチェックを入れて、「申込カートに追加」を押下した。
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あとは特に迷うところはない。
1件ずつカートに追加していく方式なので、欲しい記事が複数に亘る場合も使いやすい。
料金は複写した資料に同封された支払い票で後払いする方式なのでここではまだ支払いは発生しない。

火曜日に申し込んで、、、翌週の木曜日に作業完了のお知らせがeメールで来て、その次の月曜日に封書が到着した。20日間も掛かった。結構待たされた。

料金は、
・カラー(A4) 58円 x 1 = 58円
・モノクロ(A4) 25円 x 7 = 175円
・発送事務手数料 250円
・送料 128円
これらの合計に消費税が掛かって総計671円(税込)。
人手がかかっている割には安い印象だ。
支払いは、同封の払込用紙をコンビニに持って行った。手数料が110円掛かった。

入手した資料のコピーはA4で8枚。
表紙はカラーコピーで、軍需工場で働いているらしき子供の写真に、本号のタイトル「滅敵生活」と物騒なスローガンが書かれている。
目次には戦意を高揚するような記事のほか、空襲への備えや物資が不足した状況で役立つ生活の知恵の記事が多い。「火無しこんろの作り方と使ひ方」という記事があり、映画「この世界の片隅に」に出てきたことを思い出した。
「★印の記事は満州版には入りません。満州版の記事は内地版には入りません」という注意書きも興味深い。
奥付の隣ページには「消火と退避」という記事があり、「待避壕から消火に飛び出すまでの動作」「爆弾と焼夷弾では飛び出し方が異なる」「焼夷弾ならブスブスと異様な炸裂音と同時に間髪を入れずに飛び出す」「爆弾なら大音響がする。爆発によって吹き上げられた土砂、木材、石塊等が落ちてくるから注意」「飛行機は上空で旋回したとしても一旋回1-2分である」など本土空襲への具体的な対策の知識が並ぶ。
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取り寄せた記事「これが敵だ!野獣民族アメリカ」は計10ページ。旧字が使われているが総ルビのため難なく読むことができる。満州事変とか三国干渉とか、過去の歴史として習った出来事をつい昨日の出来事のように取り上げているのが新鮮だ。「アメリカ人をぶち●せ」はさすがに擁護できないし酷いバイアスが掛かったアメリカ人ディスりは見るに耐えないが、これほどまでに追い詰められた当時の日本人に対して、怒りよりも哀しみ・憐れみの気持ちが湧いてくる。
また、過激な文言ばかりに目が入ってしまうが書いてあること全てが全く見るに値しない世迷いごとというわけでもない。この記事で戦前の日本の言い分を読むと、私たちもまた戦後の歴史観の強いバイアスが掛かったレンズごしに歴史をみているのだということに気付かされる。
面白かった!
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◼︎まとめ

だいぶ長い記事になってしまったが、そろそろまとめに入る。
テーマは「国会図書館オンラインは古い雑誌の閲覧用途に"使える"か?」

・自宅PCのブラウザで記事の中身まで閲覧できる雑誌はほぼゼロ。これは残念だった。おそらく著作権の関係だろうが、50年くらい経過した著作物は一律著作権フリーで自由に閲覧できるようにならないものか…。著作権が大事なのは理解するが、これが実現したら公益の方が大きいと思うのだけど。

・雑誌の記事を読むには「遠隔複写サービス」を利用して紙にコピーしてもらう。今回(10ページの記事+表紙・目次・奥付)かかった費用と時間は、781円と約20日間。その情報にどれだけの価値を見出すかにもよるが、湯水のようにコピーを取り寄せられるような価格ではないし、時間(納期)もかなりかかる。取り寄せた記事の中身が期待はずれだったときはかなりガッカリするだろう。正直言って、使い勝手はかなり悪い。なお、「遠隔複写サービス」を利用するためには少なくとも目次情報が必要で、目次情報が利用できるのはデジタル化された雑誌のみ。

・デジタル化された雑誌の目次情報はかなり有用。なじみのある漫画週刊誌・写真週刊誌・大衆誌がデジタル化されていたらかなり"使える"のに、現状では主要雑誌がほとんどデジタル化されていないのが残念。それでも「中央公論」「主婦の友」「サンデー毎日」の3本の雑誌を組み合わせると戦前から2000年ごろまでをカバーできるので、大衆誌で世相を知りたい場合にはこれらの雑誌の目次を見てみると面白いかもしれない。

最後に、主要な週刊誌のデジタル化状況の調査結果を載せて本記事を終える。
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