週休3日サラリーマンのブログ

空気を読まないサラリーマンをやってます。1980生まれ男です。既婚。2011年生まれ息子、2013年生まれ娘あり。

「エヴァとは何だったのか」を知りたければ、2005年放送のBSアニメ夜話を見るべし!

私はいつも家事をしながら映画やアニメの解説動画を見るのだが、YouTubeにアップロードされている「BSアニメ夜話」のエヴァンゲリオン回を見たら、神回だったのでその話を書く。

動画はこれ。
おそらく違法アップロードなのでいつか消されてしまうかもしれない。
https://youtu.be/6G5iQ9e_57k
「2005年3月28日 NHK BSアニメ夜話 第1夜『新世紀エヴァンゲリオン』」

エヴァのテレビ放送が1995年から1996年、旧劇場版で完結(「第25話 Air/第26話 まごころを、君に)したのが1997年なので、番組放送時(2005年)はエヴァ完結から8〜10年経っていて、新劇場版シリーズ(2007年〜)はまだ製作発表もされていない。

主な出演者は、以下の通り。
岡田斗司夫(アニメ解説、オタキングとしてYouTubeでブレイク中)
唐沢俊一(評論家)
大月俊倫(「エヴァンゲリオン」企画)
宮村優子(「エヴァンゲリオン」アスカ役の声優)
滝本竜彦("ひきこもり世代の旗手"として本番組に出演。2001年に執筆した小説『NHKにようこそ!』(大学を中退した引きこもりの青年と、それを救うことが目的という少女を軸に、引きこもりの葛藤する姿を描いた作品)が漫画化・アニメ化されるほどのブレイク))

岡田さんや唐沢さんによるエヴァの解説、分析が実に的を射ていて面白いのだが、この神回のMVPは滝本さんという放送時26歳の作家さんだ。
エヴァで感動したりハマったりするというのは、ある意味「エヴァ病」に罹患することだと私は思っている。そしてこの滝本さんという根暗な若者は、エヴァ完結から8年を経た放送時でいまだに重度の「エヴァ病」患者なのだ。
YouTubeやブログで個人による発信が可能な今、「エヴァ解説」なるものは有名無名合わせて星の数ほど存在するが、どれもエヴァを俯瞰視点から解説したもので、この番組の滝本さんのように「エヴァ病」患者が自らの姿を晒しているものはない。そもそも、2007年にスタートした新劇場版シリーズが従来の「エヴァ病」患者を置いてけぼりにするようなコンセプトで、それも2021年の「シンエヴァ」で終わって2年が経過した今、「エヴァ病」自体がこの地上から根絶されているかもしれない。

この番組の滝本さんのトークは終始とにかく情熱的で熱く、なんだか心を打たれる。最後は岡田さんや唐沢さんとの格の差を見せつけられたせいか打ちひしがれてしまう(笑)のだが、それもいい。
具体的にツッコミを入れるとかわいそうなのでそれは避けるが、彼のトークの一部を引用して載せておく。

エヴァ当時を知らない今の若者は、「どうしてオッサンたちはそんなにエヴァに熱狂したのか?エヴァとはなんだったのか?」今ひとつ分からない人が多いと思うが、このBSアニメ夜話の神回で実際の「エヴァ病」患者の姿を見ることがその答えに最も近いと思う。

なお、滝本さん以外にも、岡田さんと唐沢さんによる「エヴァは文学である」論も面白いし、大月俊倫(「エヴァンゲリオン」企画)さんによる、「当時の偉いオジサン達の反対の声を無視してエヴァを作り上げた」話も熱いし、アスカの声優・宮村優子による、「気持ち悪い」セリフ誕生秘話も伝説だ笑。
本当に神回。

以下引用。

6:30
司会者「滝本さんはエヴァにハマった世代ですか?」
(テロップ:作家 滝本竜彦(26歳) 「ひきこもり世代の旗手」として若者のネガティブな心情を描く)
滝本竜彦「高校の頃ちょうど生放送、リアルタイムで見てまして、それ以来、僕の人生とは切っても切り離せないくらいにハマった感じですね」
司会者「いまだにエヴァは引きずってますか?」
滝本「ええ、いまだに1年に1回くらい、ビデオを全巻見返したり」

18:50
(滝本が「エヴァでお気に入りのシーン」として選んだ、第4話と第25話(Air)でシンジが"逃げる"シーンが流れる)
司会者「このシーンを選んだのはどうしてですか?」
滝本「シンジ君は主人公なのでヒーローじゃなきゃダメだと思うんですよ。それでああいう『もうやだ死にたい』とか『やってられない』とか、そういうシーンがとてもヒーローらしくて尊敬した、という…」
滝本「あのシンジ君の状況に立たされた場合、100人中100人が『よし、人類のためにカッコいいロボットに乗って、すぐ隣には美少女、戦うぞ!』となると思うんですが、シンジ君は戦わず、逃げようとするんですけど、この場合逃げたりする方がはるかに辛い、大変だと思うんですよ。それなのに逃げるというのは偉いなあ…。つまり地球の運命とか正義のためとかいうより、中学生の僕の心の個人的な悩みのほうが重要なんだ。だから俺は逃げるんだという風にして逃げて、結局劇場版の最後まで彼はまったく戦わず逃げ続ける訳ですが、それがとてもカッコイイなあと思って尊敬しました」
他の出演者「普通の作品なら、逃げて戻ってきて『成長エピソード』になるけど、この作品は成長しない。それは特長ですよね」
滝本「そしてこれがこう、物語の根幹に関わることで、とにかく成長しないで逃げ続けるというのが、物語に対して嘘をつかない、誠実に、途中でシンジ君が強くなったり、『よし戦うぞ』みたいにやったらまるっきり嘘くさくなるというか…最後まで逃げ続けてくれたことに深い感謝の念と尊敬を…」
岡田斗司夫「ちょっと異論があって…いかにもすぐに捕まえてくれそうなところで逃げる感じが、逃げたんじゃない、拗ねたんだと思う」
他の出演者「ガンダムアムロは成長して男になるが、シンジ君は成長しない」
岡田「エンタメを目指していない。エヴァはどうみても純文学」
唐沢俊一「アニメというのは完全にエンタメ、視聴者が王様で、『我々をさあ、いかに楽しませるか?』と思ったら、そうじゃなくて一歩も二歩も、作者の内面に踏み込まないといけない世界が展開されてびっくり仰天した」

25:50
司会者「滝本さんはブームの当時、関連本とか読まれました?」
滝本「出てるのは大抵読んだんですけど、そういうのを見て、高校生とか大学生だった僕は『なんだ、このテレビとかに出て分かったようなことを言っているクズどもは!世界で一番おれが、エヴァを分かっているのにこいつらたわごとを!』」
唐沢「ああ、こういう人が100万人くらい居たんですよ」
滝本「飲み会とかで『劇場版って失敗作だよね』とか言われた瞬間、(おれは、テーブルを)『ガンッ』、『お前に何がわかるんだこの野郎!ぶっ殺すぞこの野郎!お前如きに…エヴァの素晴らしさが分からないお前なんて、死んでしまえ。」というぐらいのこう、怒りが…」
岡田「いいなぁ…」

42:50
(唐沢が「エヴァでお気に入りのシーン」として選んだ、旧劇場版のラスト「気持ち悪い」→「終劇」が流れる)
唐沢「いろんな人間がいろんなことを言い、一人の庵野秀明という人間の内面を覗き込もうとしていたという行為、それにいろんな理屈をつけて自分が正しい正しくない、またそれを私や岡田さんのようにある程度クールに眺める、全てのものをひっくるめてこのセリフ一言に象徴されているような気がします。」
唐沢「与えられるべき回答が与えられず、楽しませてくれるべきエンターテイメント性が欠落していた。その欠落というものに自分の心の中の何かというものを補完して完全な作品としたときにそれは自分だけのエヴァンゲリオンになる。その作業をたぶん10年間エヴァに魅入られた人々はずっと続いていて、そしてそれは自分の内部においては非常に充実した、楽しい10年間だったかもしれないけれども、ある意味、それは他人から見れば気持ち悪いと言われても仕方のない行為であったということ。それが悪いという訳じゃないですよ。そういうことで自分自身を見つめ直すということをさせてくれた作品だったという風に僕は思います。」

(深刻な顔をして聞いていた滝本に司会者が話を振る「滝本さん、今の話を聞いてどうですか?」)

滝本「確かに気持ち悪いんですが…気持ち悪いな…気持ち悪くていいじゃないか。だって気持ち悪い…気持ち悪いですよ」
唐沢「そうです、いいんですよ気持ち悪くて」
滝本「いやでも、気持ち悪いのはダメですよやっぱ。気持ち悪い…気持ち悪いのはダメですよ。気持ち悪い人は死んだ方がいいですよ。これからうちに帰って、10年間、僕は何をやって暮らしてきたのか見つめ直します」