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空気を読まないサラリーマンをやってます。1980生まれ男です。既婚。2011年生まれ息子、2013年生まれ娘あり。

(映画レビュー)北野武の「首」は三谷幸喜の「鎌倉殿の13人」に勝てていない。

先日、北野武監督の最新映画「首」を劇場で鑑賞した。
YouTubeの映画レビューを見ると映画通からは軒並み好評価を得ているようだが、私にはイマイチだった。

一番キツかったのは、ギャグがスベっているところ。
「世界まる見え」とか土曜日夜に安住アナウンサーとのコンビで出演していた「情報7days」などでたけしのギャグがスベっているのは「またか」と許せるが、映画なのだからもうちょっとまともなギャグをやって欲しい。たけしのギャグってネタ自体がベタでつまらないこともあるが、たけし本人がシャイなためにギャグをやりながら「照れ」を出してしまうところが一番いけない。「落語の名人は決して自分では笑わず、おかしい話を真面目に語り倒すことで客席だけが爆笑するものだ」と本田勝一が言っていたが、私もその通りだと思う。

・秀吉が「草履とり」を持ちネタとして使うシーン
・「ブス専」の家康エピソード
キム兄の「こいつらみんなアホか」
高松城主が切腹を決断する場面で坊主が泣きながら引き止めるフリをしながら「なんちゃって」と舌を出すシーン
高松城主の切腹の儀式が長くて秀吉が不謹慎にも「早くしろよ」というシーン

どれもギャグとしてのレベルが低くて笑えなかった。
ネタはそのままでいいから、もっとお笑いとしての間とか前フリをよく練り上げてくれれば10倍は笑えたと思うのだが。

たけし映画で引き合いに出すなら、「アウトレイジ」の村瀬組の木村が大友組に謝罪に行った時のダチョウ倶楽部みたいな問答は面白かった。
最初は「こんなつまらねえことで俺の指詰めれるか!」と言ってるのに
\ぐずぐずしてんじゃねえ/
\ビビッてんじゃねえよ/
と野次られるとなぜか
「やってやっから道具持ってこいこの野郎!」となるやつ笑。
あのシーンではあくまで劇中では真面目に演じ切っているから面白いのだ。

アウトレイジ」を引き合いに出したついでにもうひとつ比較をすると、「アウトレイジ」ではヤクザ社会のルール上でヤクザ同士がゲーム(抗争)をしているということが一応の説得力を持って描けていたが、本作はそれができていなかった。
北野武監督が本作のインタビューで「戦国時代の倫理観は今とはまったく違っていたはず」というようなことを言っていて、そこには賛同するのだが、ルールとゲームが見せられていないことの言い訳にはならない。
ルールとゲームが見せられていないことで、登場人物たちがただ闇雲に無茶苦茶な争いをしているようにしか見えず、残念だった。
いくら戦国時代の倫理観が現代とは異なるとはいえ、刀で斬られたら痛いし、他人が斬られているのを見たら「痛いだろうな、かわいそうだな」という情が働くと考える方が自然だ。登場人物が全員サイコパスというのは無理がある。

北野武が本作を製作した動機のひとつは、既存の日本の伝統的な戦記物語やNHK大河ドラマが、史実に現代の価値観を無理やり当てはめて義理人情の物語に仕立ててしまうことに対するアンチテーゼがあったようだが、NHK大河ドラマも昔より進化している。
2023年の「どうする家康」は今ひとつだったが2022年の三谷幸喜脚本の「鎌倉殿の13人」は主人公格の頼朝や義経を無理に人格者として描かず、一癖も二癖もある人物として描いていてしっかり納得感があったし、その上で感動もさせてくれたしギャグも面白かった。

北野武の「首」は三谷幸喜の「鎌倉殿の13人」に勝てていない。
これが私の総括だ。